2017年8月8日火曜日

クリニカルシークエンスで考えること

先週末、クリニカルシークエンスに関する雑誌をちょっと読み、遺伝子検査会社のCEOのインタビュー録音を聞きました。どちらもウェブからの情報です。

雑誌とはこちら、Clinical OMICs 今月号です。フリーで読めますよ。
色々面白い記事がありますが、ざっと見て、自分の興味のある記事だけをつまみ読みしました。
もう一つのインタビュー録音というのはこちら、medelspod.com の、Making Genetic Testing Mainstream Medicine with Sean George, Invitae 
余談ですがたまに、英語の勉強に、と思ってこういうのを読んだり聞いたりしています。
興味のある分野だと頭に入ってくるのが違いますね。ただ、仕事感が半端ないので週末の勉強には向かないかも。

クリニカルシークエンスで皆さん先ず悩むこと、というと思いつくのは、

  • 全ゲノムでやるかエキソームでやるか
  • 偶然見つかった変異(incidental findings)の取り扱いをどうするか
  • 増え続ける莫大なデータをどうさばくか
だと思います。これは世界共通の悩みみたいですね。
まず、全ゲノムを読むかエキソームを読むか問題は、単純にコストの問題だと思います。
いくら1000ドルゲノムとか言われていても(NovaSeqなら100ドルゲノム?)、そのコストを実感するには相当の初期投資が必要。
実際に数千人規模のゲノムプロジェクトでは、数十人~多くても数百人を全ゲノムで深く読み、残りの数千人は薄く読む、ということが行われていると思います。これはコストの問題です。

臨床に用いるためには深く読む必要がある、と思いますが、それには日本円で数十万円以上かかるでしょうし(もしかしたら100万円以上?)とても保険では賄えきれない。

そこで現在、より一般的に読まれているのがエキソーム。
これなら安価に深いカバレッジを読むことができる。
しかしもちろんエキソームは遺伝子のコーディング領域しか読んでいない。

Incidental findings も大きな問題で、例えば、ある疾患の検査で患者さんが自分のゲノムを読んだとする。そして、その疾患の原因遺伝子型がわかって、適切な治療方法も選ぶことができた。
でも同時に、別の疾患のリスクも高いことがわかってしまった。この新たにわかった疾患の治療方法は現在まだ無い。死亡率も高い。さて、この事実をドクターは患者さんに伝えるべきか否か? リスクがどれくらい高ければ伝えるべきか?
検査対象でもなかったのに、不治の病を突然告知されてしまう不安は、人それぞれだろう。僕は知りたくない。知ってしまったら生命保険にも入れなくなってしまうだろうし。

パネルシークエンスなら知りたい病気の遺伝子だけ調べてもらえる。そんなニーズ?もあるだろうからこれもクリニカルの現場では人気が高い。

以上は主に、ショートリードシークエンスの話。
ロングリードをクリニカルシークエンス、ヒトゲノムの変異解析に応用しようという動きは今年大きく動いています。
なぜかというと、ショートリードでとらえきれない変異でも病気に関連する変異(多くは数百bpのInDelや、繰り返し配列、さらに転座やSegmental Duplication)が多く見つかってきたから。
もちろん、病気に関する変異の全てを見つけることは、現在はまだ不可能なので、「変異の何%を見つけた」と言うことはできないという。

さて、これからゲノムデータはどんどん増えていくことでしょう。
一説には、2025年頃までには、ヒトゲノムのシークエンスデータ保存に必要なストレージ容量は、2~40エクサバイトになるそうです(Natureのこちらの記事
YouTube、Twitterでアップされるデータ量を遥かにしのぎ、天文学で使われるデータ量をもしのぐとのこと。

エクサバイト、ってペタバイトの1000倍だから、そう考えると大したことないな。
このNatureの予想は2015年だからそんな古くはないけれど、もっと、ゲノムデータ以外のフェノタイプ的アノテーションデータ(何だろう、動画かな?心電図とか)がパーソナルゲノムデータに付随してそれこそひとりのパーソナルゲノムデータが1ペタとかになるんじゃないか、って妄想した週末でした。

ちなみに、「エクサバイト:服部真澄 角川書店(ISBN-10: 4043944187)」というSF長編小説がありますがお勧めです。10年くらい前の小説ですけど今でもいけると思う。
クリニカルシークエンスとは直接関係ありません。念のため。


0 件のコメント:

コメントを投稿